2009年12月12日
釣れんボーイ

先日、『釣りキチ三平』のことを書いたのだが、他に釣りマンガといえば、『釣りバカ日誌』くらいのもので、1000万人を超える(ほんとに?)釣り人口のことを鑑みるとあまりに釣りマンガの歴史は貧相だ。
やはり釣りはひとりでするものだからなのか?「友情・努力・勝利」の方程式にはまりづらいのか?バス釣りをチーム対抗で魅せたりすればいいんじゃないか?それとも、僕が知らないだけなのか?
釣り少年たちと伝説の釣り師たちの5対5の釣りバトル(ルアー、フライ、餌釣りの釣り方やターゲットをかえれば組み合わせは無尽蔵だ)とか、魚がヒットした瞬間にギャラクティカマグナムみたいに火弾がとんだり、宇宙があらわれたりするような必殺技を身につければきっと盛り上がるに違いない。
そんなジャンプ的なマンガとは対極にあるけれど、釣りマンガの名作をひとつ思い出した。いましろたかしの『釣れんボーイ』だ。
売れないマンガ家“ひましろたけし”がときに釣りに没頭し、ときに日常を憂い、ときに妄想を膨らませるだけの、ぼんやりとしたマンガだ。鮎にのめり込み、東北から山陰、四国にまで鮎を追って遠征する。釣れれば尊大になるし、釣れなければ落胆して、肩を落としながら帰路につく。でもまた前のめりに釣りに出掛ける。
たいして売れていない(からなのか)、ひましろ先生はマンガを描くこともせず、釣りに行き過ぎる。ただただ、それがうらやましくて、自分が人生を誤ったかのような気もしてくるから、実は危険な思想書なのかも知れない。必殺技はでてこないけれど、釣りの悦びと無機質で淡々とした社会生活と、くだらない妄想には深く共感してしまます。
ぼーっと読むのに適してます。僕は分厚い単行本を持っているのですが、上下巻の2冊になった文庫本も出ています。