2011年01月20日
『ライズ戦記』を読む

『ライズ戦記―ライズを追ったフライフィッシャー20年の軌跡/増田千裕, 角敬裕 』つり人社
私はライズを放棄するより、まっとうなサラリーマン生活を放棄する道を選んだのだった。(中略)そしてついに私は東京での生活もあきらめ、川辺に移り住む決心をした。
フライフィッシャーの連載をまとめた『ライズ戦記』を読了。連載時も楽しんで読んでいたのだけど、まとめて読むとその釣りキチぶりに圧倒されます。著者の増田さんは、“川辺に移り住む決心”をし、まだ寒さの残る2月末の渓流釣りの解禁前日から狩野川の河原にテントを張って数ヶ月間、魚釣りに没頭し、フライフィッシグの重要な要素である種々の水生昆虫の羽化を追い続けます。
狩野川から富山の山岳渓流、そして南紀の渓流へライズを求めて流転していきます(本書では、その詳細は書かれていないのですが、その合間にパタゴニアの川とトラウトを網羅する旅もしています。僕が増田さんの名を知ったのはそのパタゴニア釣行の連載でした)。狩野川だけでなく、富山の常願寺川でも9日間のテント合宿をし、南紀の川を攻めるにあたっては大阪の知人の家に転がり込む始末です。フライフィッシングに対してストイックに向き合うその姿に、ぐいぐいと引き込まれてしまいました。
そしてその釣行記を、豊かなテキストにしているのが井伏鱒二や佐藤垢石、山本素石、芦澤一洋ら先人が残した釣行のエピソードの引用です。釣り好きの系譜は連綿と続き、途絶えることがありません。増田さんの情熱は次ぎの世代へとまた引き継がれるに違いありません。
残念なのは、写真のクオリティ。白黒のコントラストが全体にきつくて非常にもったいないです。定価1890円なので、カラーグラビアがはいればきっと2000円を超えるのは免れないだろうし、それは確かに高過ぎます。そうするとiPadは持ってないけど、澄んだ流れや美麗な魚の写真がたくさん載っているのなら電子書籍というスタイルもいいなぁと思います。雑誌連載時以上に写真があったり、その川のグーグルマップにリンクしていたりすると便利だもんなぁ。ヒットフライのタイイングページや水生昆虫の詳細な生態情報にリンクするのも有効だ。ヒットシーンを動画で見れると臨場感も得られるし。
これ、だれか企画してくれませんか?
2011年01月19日
TROUT HUNTER
レネ・ハロップというフライ・フィッシングのえらいひとの本を近所の古本屋で見つけました。定価4,725円という図鑑のような厚みのある本に破格の値段がついてました(財布と相談せずに買えました)。
古本屋でも図録とか、図鑑のあたりはあまり集中してみないのですが、背表紙の「TROUT」という文字が脳内に太字で伝わり、手にとった次第です(確か、輝いて見えたような気もします)。横文字が縦に並んでいても全然関係ありません。「鱒」とか「釣り」とか「渓流」とか、いくつかのキーワードに関して僕のサーチエンジンは敏感に反応するようにできています。
著者のレネ・ハロップについてもフライ・フィッシングの雑誌でみたことがある名前でした。調べてみるとノーハックルサイドワインダーという特徴のあるフライを考案した有名なフライタイヤー&フィッシャーです。春までにゆっくり読みたいと思います。
タグ :古本フライ・フィッシング
2011年01月15日
『君は永遠にそいつらより若い/津村 記久子』

舞台は京都だ。主人公のホリガイさんは作者が通っていた大谷大学らしき大学の4回生で、就職も決まりまもなく卒業を控えている。ソニックユースやハスカー・ドゥなんかのUSインディのバンド名や、京都の御幸町や新町など知っているの通り名にほくそ笑み、序盤のとぼけた雰囲気に油断してさくさくと読みすすむと終盤に、いくつかの出来事があって、寒気がした。僕のココロは強引な力で摑まれたかと思うと、そのそのまま感情の奥に引きずり込まれ強く揺さぶられた。
それは文庫本の解説で松浦理英子が「文学の孕むものが読む者の胸の底、魂と呼ぶしかない深みにまで沁み入る」と書いているよう文学の力としかいいようがないものだ。
普通の生活の営みのその傍で、ぽっかりと穴を開けてひとが落ちるのを待っている根源的で普遍的な“悪”。その縁をかろうじて躱したり、ときになぞったりしながら過ごしているルーティンで平和な毎日のひそみで、悪は、無作為にひとを襲い、喰らう。その深い傷に痛みながら、その傷故にひとは、輪郭のはっきりしない生きる希望みたいなものではなく、はっきりとした生きる意思を持つのだ。
そういう意味で、腑抜けたJポップみたいな『君は永遠にそいつらより若い』みたいなタイトルより改題される前の『マンイーター』の方がこの小説のタイトルに相応しいと思う。
津村記久子の本は「カソウスキの行方」と「ポトスライムの舟」を読んでいたけれど、読後感が全然違う。まだ始まったばかりなのに、今年読んだ本のベストに決定だ。
2011年01月08日
「江口寿史のお蔵出し 夜用スーパー」

年末に一乗寺の恵文社で買った「江口寿史のお蔵出し 夜用スーパー/江口寿史」。
僕が好きなマンガ家はどんどん寡筆になっていくのですが、その最初が江口寿史でした。それでも、こうやって10年分の仕事がにまとめられて新作としてリリースされるのはうれしい限りです。
食べ歩きレポートみたいなコミックエッセイはともかく、わずか16ページの「ドギワ荘の青春」シリーズが最高です。藤子不二雄Aの名作「まんが道」をその愛故に、冒涜しています。漫画の良心ともいえるテラさんのダークサイドをあぶり出す怪作です。
「ラッキーストライク」や「平成大江戸巷談イレギュラー」みたいな連載マンガもなんか懐かしいです。当時、週刊誌連載が続くのか?という期待と不安が、マンガの内容よりも先行していたことを思い出しました。両方ともストーリーが転がりはじめる前の人物紹介だけで終わっているのがやっぱり残念です。
江口寿史のお蔵出しは2度目なのですが、80年代半ばにスピリッツで連載していた「パパリンコ物語」は、いまだに封印されたままです。上記の2作はともかく「パパリンコ物語」は復活しないかな?年に1話ずつでもいいから書いてくれないかな?っていうか、続きは無理でも再読したいです。読ませろ〜。
2011年01月02日
ブックオフでお正月
正月を京都で過ごしています。吉田神社へ初詣で行った以外は特にすることもなく、行くところもないので、ブックオフの半額セールに行き本を購入。今年も年初からちょっと暴走気味ですが、読みたい本が安く買えるのであれば、問題なし。
今年もたくさんの本に出会いたいものです。いや、よい本に出会いたいものです。
『開高健:男が、いた。/高橋昇』小学館
『ゴヂラ/高橋源一郎』新潮社
『鈴木いづみプレミアム・コレクション』文遊社
『自伝からはじまる70章/田村隆一』思潮社
『子午線を求めて/堀江敏幸』講談社文庫
『君はそいつらより若い/津村記久子』ちくま文庫
『あちゃらかぱいッ/色川武大』河出文庫
『東京怪童(1)/望月ミネタロウ』モーニングKC
『東京怪童(2)/望月ミネタロウ』モーニングKC
2010年11月01日
知恩寺の古本祭
台風が予想よりも南の方を通ったため、百万遍知恩寺の「秋の古本祭」に初日から参戦することができました。午後から用事があったため、均一台を中心に見てまわり、釣りの本や山の本を中心に購入。16冊買って、1600円というコストパフォーマンスの良さ。
もう少しゆっくり見てまわりたかったのですが、また3日にもう一度行きたいと思います。
しかし、安いからと手にとった本の何冊かは、既に持っていた本でした(改題された本もありました・・・)。買っても、読まないので買った本と持っていない本がわからなくなってきました。部屋の中は、写真で披露できないほど山積みになって来ていて、家族の顰蹙を買っています・・・。
整理はしたいのですが、本棚を買うくらいなら、僕は本やCDを買います!