蛹化の女

もり

2007年08月02日 01:49

羽化できなかった蝉の幼虫を見ながら僕の頭のなかでは戸川純の「蛹化の女」が静かに鳴っていました。ノイズ混じりの古いレコードをかけたみたいに“変わり果てた私の姿”のフレーズが執拗に何度も何度も繰り返されていたのです。


「蛹化の女/戸川純」

月光の白き林で
木の根掘れば蝉の蛹のいくつも出てきし
ああ

それはあなたを思い過ぎて変わり果てた私の姿
月光も凍てつく森で
樹液すする私は虫の女

いつのまにかあなたが
私に気づくころ
飴色のはらもつ
虫と化した娘は
不思議な草に寄生されて
飴色の背中に悲しみのくきがのびる

月光の白き林で
木の根掘れば蝉の蛹のいくつも出てきし
ああ

それはあなたを思い過ぎて変わり果てた私の姿
月光も凍てつく森で
樹液すする私は虫の女



天才、戸川純の才能が作り出したひとつの奇跡。
絶対的な美しさを持つ醜い蛹化の女のことを思うと僕は笑いがこみあげてくるほど悲しい気持ちになる。

中学時代にこの歌を聴いたから、この歌の収録されている「玉姫様」を聴いたから、僕は今、ここにいる。

戸川純のことになるといまだに気が狂いそうになります。


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