魔法の声
『ハートのエース/RCサクセション』
忌野清志郎の声は特別だ。その声はときに甘くやさしく響くのだが、実はひどく破壊的で、排他的でもあった。孤独な誰も寄せ付けない声をしていた。そんな風に聞こえる声を僕はあとひとり知っている。矢野顕子だ。
清志郎が歌えばどんな曲も清志郎のロックンロールになるように、矢野顕子が歌えばどんな歌も彼女の歌になる。ふたりともふたりにしかない魔法を持っていた。
矢野顕子はいろんな歌をカバーしているのだが、なぜかRCや清志郎の歌は残していない。「きよしちゃん」という歌まで歌っているのに・・・。
「湖のふもとでねこと暮らしている」はRCの「山のふもとで犬と暮している」のアンサーソングだといわれている。
湖のふもとで ねこときょうも暮らしている
あの山のふもとで 犬と暮らしてるあなた
いつか犬と二人で 帰らぬ旅に出ても
わたしきっと あなたを きっと好きでいるから
(「湖のふもとでねこと暮らしている」矢野顕子)
離れている時でも ぼくのこと
忘れないでいてほしいの ねぇ おねがい
悲しい気分の時も ぼくのこと
すぐに呼びだしてほしいの ねぇ おねがい
(「ひとつだけ」矢野顕子&忌野清志郎)
矢野顕子の『はじめてのやのあきこ』で「ひとつだけ」をいっしょにカバーしているのだが、清志郎は“わたし”を“ぼく”と言い替えて歌っている。清志郎の居ない世界であらためてこの曲を聴くとまた泣きそうになってしまう。
清志郎の死に際して、矢野顕子は「永遠に友だちです」というコメントを残していた。
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