天狗になりたい

もり

2009年02月23日 00:02



家に引きこもって黒田硫黄の『大日本天狗党絵詞』を読む。

息子はちょっと前に玉なしの自転車に乗ることができるようになったのだが、主人公のシノブが空を飛べるようになったとき師匠に「雲踏みができるようになったかシノブ。自転車のようにある日突然できるようになる」と云われる。シノブはその瞬間にひとでなくなり、天狗になったのだ。

ひとの世にまぎれた天狗たちの気高い思想は、黒田硫黄のマンガに対する気負いも含んだ意気込みとすっかり重なりあうようだ。天才だけが持つ孤独とマンガに選ばれた者の持つ恍惚が、黒く塗り潰されたページから登場人物や町や空の匂いを伴って溢れ出してくる。

一巻に登場する天狗たちはクールで恰好いい。僕も修行を積んで天狗になりたくなるほどなのだが、話が進み、天狗たちが伝説の天狗“z氏”を担ぎだし、日本を治めんと集結し徒党を組み出すに至って、気高さを失った天狗がどんどん堕落していくのが、物悲しい。

最近、表紙のデザインがかわって復刊されているので、それもやっぱり手に入れたい。


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