熊のはなし。

もり

2006年10月18日 02:50

 秋が深まり今年も各地でクマの出没が増えているようです。10月17日の朝、早く滋賀県長浜町でクマがあらわれ住民と警察官がケガを負いました。14日には北海道でヒグマに襲われ死傷者がでています。
 渓流釣りにいくとカモシカやサルは何度か見かけたことがあるのですが、クマに鉢合わせたことはありません。湖北の高時川で一度、クマらしい足跡を見たことがあるくらいです。
 
 買いおきして山積みになったどの本を読むかはまったく気分次第で脈絡がないのですが、熊に関係する本を最近続けて読みました。
 
 

「ぼくの出会ったアラスカ/星野道夫」は星野さんの写真と文章をまとめたアンソロジーででさくさくと1時間ほどで読めました。星野さんがカムチャッカでヒグマに襲われ死んでから、今年でちょうど10年がたちました。
 ボクは動物写真が苦手だったので、星野さんの生前は彼の写真集や本を読むことはなかったのですが、彼の死後、いくつかの追悼文を読むうちに興味をもち何冊かの本を読みました。彼のアラスカを撮った写真はもちろん素晴らしいのですが、彼の丁寧な文章にボクはより強く惹かれました。無駄のない地に足のついた彼の文章からは静かな息づかいが感じとれます。
 星野さんの本の向こうには荒野が広がっていて、すぐそこで焚き火をしている星野さんが語りかけてくるようです。

 星野さんとアラスカの出会いのエピソードがボクは大好きです。

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東京、神田の古本屋でアラスカの写真集を見つけた星野さんは、そのなかの一枚の写真に心を奪われ、写真のキャプションに書かれた村の村長宛に手紙を書きます。村の名前にアラスカとアメリカを付け加えただけの手紙にはこう書かれています。

“あなたの村の写真を本で見ました。たずねてみたいと思っています。何でもしますでの、誰かぼくを世話してくれる人はいないでしょうか・・・”

 半年たった後に星野少年のもとに海外郵便が届きます。

“・・・手紙を受け取りました。あなたが家に来ること、妻と相談しました・・・夏はトナカイ狩りの季節です。人出も必要です。・・・いつでも来なさい・・・”
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 星野さんがヒグマに襲われ非業の死を遂げなかったらボクは星野さんの文章に出会っていなかったかもしれないと思うと悲しい気持ちにおさまりが付きません。


 ところでヒグマといえば新井英樹の「The World Is Mine」の完全版が今、エンターブレインから刊行中です。星野さんの本とは対極にあるような血と暴力にまみれた20世紀最後に書かれた問題作です(星野さんの本にも暴力の匂いがするこがあります。自然はときにやさしく、ときに狂暴です)。純粋で圧倒的な暴力の美しさにゾクゾクします。


 最近、読んだ本のなかには熊と闘うことを大まじめに語ったものもありました。「地上最強への道〜大山カラテもし戦わば〜/大山倍達」です。牛と闘ったのは有名ですが、この本のなかで大山総裁はライオンや虎、熊などの猛獣と闘うことを真剣に考えています。どう戦えば勝つことができるのか・・・。とにかくすごいです。

 北海道で人を襲ったヒグマは体長が195センチ、体重が250キロあって、その写真を見るととてもじゃないですが人間ではたちうちできません。大山総裁もちょっと敵いそうにないです。


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