『NARUTO 巻ノ55 〜大戦、開戦!〜/岸本 斉史』
震災の影響で発売が遅れていた『NARUTO』の55巻がようやくリリースされました。今巻ではいよいよ第四次忍界大戦が開戦します。
これまでのキャラクターが総動員といった感じでプロレスオールスター戦状態なのですが、それぞれのキャラクターがそれなりに闘いを魅せるだけで、詰まんないです。とうに死んだキャラがカブト(嫌い!)の穢土転生によって生返り、しかも操られ、それなりのページを使って闘います。木の葉や砂の忍者はともかく雲や岩の忍者を続々と登場させた尻拭いのような巻です。ちゃんと個性を与えられた新しいキャラ達の活躍の場をつくるための仕掛けとして、大好きなデイダラやサソリが、劣化コピーのような形で彼らと対峙することになります。クローンゼツが相手では、せっかくの新キャラ達が活躍する場面がなくなるのは理解できるのですが、この後、イタチやペインさえもカブトの術の言いなりになるのはどうにも受容できかねます(それに旧五影や多数の忍者のDNAを集めながら、自来也は無理っていうのは都合よすぎます)。
かってのマダラはたったひとりで、木の葉に挑み、それが何より伝説となったのに、16年前の轍を踏まないように“暁”を組織し、入念に準備してきた陰謀が露になり、陰謀が陰謀でなくなった結果、そのマダラの強い復讐心すら、分散され薄められたような気がします。濃密な個々の戦いがメインだったこれまでの『NARUTO』が組織の戦いになった途端隙だらけになったようで残念です。だいいち忍者は“しのぶ”者であるはずです。大勢が集まって軍隊にように正面からぶつかりあうと、その時点で忍者としてのアイデンティティを失いその個性を発揮できないのは当然の結果です。
ジャンプの連載でもまだ当分はこの流れが続くでしばらくは辛抱しなといけません。
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