『ストリート・キングダム/地引雄一』
『ストリート・キングダム〜東京ロッカーズと80'sインディーズシーン〜/地引雄一』(K&Bパブリッシャーズ)を読了。
69年生まれの僕は東京ロッカーズが盛り上がっていた70年代の後半はまだ半ズボンをはいて虫採りに夢中になって走り回っていた小学生だった。それから10年経って大学生になった頃、宝島でそんなムーブメントがあったことを知った。フリクションとかリザードとか興味はあったけど、日本のバンドより洋楽の方に惹かれていたので、音源を探すこともなかった。
この本を買ったのは、そのフリクションやリザードやS–KENらの未発表ライブのDVDが付いていたからなのだが、それよりも300ページの本の1/3を占める当時の写真の方がずっと素晴らしく、音はわからなくても、当時の熱を感じることができる。それはライブシーンの写真よりも、なんでもないスナップ写真の方が鮮明だ。
東京ロッカーズの真ん中にいた世代は、それ以前から音楽活動をしていたのだが、いったん挫折を経験した後にパンクと出会っている。挫折を味わった苦さと、それでも音楽しかないという強い決意のようなものがその眼差しから伝わってくる。
東京ロッカーズと呼ばれたムーブメントはほんの数年で終わったのだが、そのシーンに感化された恐れを知らない若者たちにその熱は受け継がれインディーズブームで一気に爆発するのだ(そして資本に取り込まれた末にバブル崩壊と共に瓦解することになる)。
テキストはその歴史(特に勃興期)を丹念に追ってはいるのだが、100ページも写真に使っているので、分量が少なく物足りない感じもする。著者がまえがきで述べているように、著者自身が実際にそのシーンの中で体験したことのみがベースとなっているので、仕方がないのか・・・。
しかし、この本でしか見れないようなライブのちらしなどの多くの図版類は貴重だ。今みたいにパソコンで手軽に作れるものではないので、バンドやイベントの特徴が表れていて眺めているだけで楽しい。ちらしも100ページくらい欲しいくらいだ。
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