『冷たい熱帯魚』を観た

もり

2011年03月26日 23:50



京都みなみ会館で園子温監督の『冷たい熱帯魚』を観ました。

冒頭から最後までずっと役者も映像もテンションの高いままで、最後まで一片の容赦も救いっもなく、ぐったり疲れました。自分の体力に合わない重いボウルでボーリングをしたみたいです。心地よさはゼロです。

「愛犬家殺人事件」にインスパイアされたという事前の情報を持って観たのですが、魚の繁殖にまつわるエピソードはさわりの部分だけで、あとはでんでん演じる村田の異様な自己肯定と押しの強さだけで、140分間の映画が展開していきます。こんなひとは僕の周りには居ないけど、実はこういう自我の持ち主がいろんなところで社会を動かしているのでは?と心配になります。

その村田が気の弱い主人公に「おまえは幸せか?」と執拗に問い詰めるシーンがあって、なぜだか僕は『銀河鉄道の夜』の「ほんたうのさいわひ」のことを考えてしまいました。ジョバンニの考える「さいわひ」と村田の考える「幸せ」の違いの幅がこの世界に災厄と戦争をもたらしているに違いありません。そして誰もがその両極を持ち合わせ、あっちの「さひわひ」とこっちの「幸せ」を行ったり来たりしているのです。

あと余談ですが、山奥の細い谷の流れに遺体の肉片を捨てる場面で魚が全部食べてくれるというのですが、アブラハヤしかいないような感じで、ちょっと無理があるような気がしました。ピラニアや肉食のナマズ類をはじめとする熱帯魚の餌にした方がずっと早くなくなるのではと、残酷なことを考えてしまいました・・・。

冷たい熱帯魚
京都みなみ会館


関連記事