『百鬼夜行絵巻の謎/小松和彦』
『百鬼夜行絵巻の謎/小松和彦』(集英社新書)を読了。
妖怪について、学術的にマジメに研究している小松和彦さんが、2007年に発見された絵巻「百鬼ノ図」にインスパイアされ内外で認知されている60本以上の“百鬼夜行絵巻”の成立の歴史について系統だてて考察しています。模写が繰り返される間に、複雑に入り組んだり、手心が加えられたりした絵巻の成立の歴史を紐解いていき、よりオリジナルに近い絵巻を探る単純でありながら、綿密な研究の過程が記されています。
しかしそうした本筋は置いといて、この小さな新書に掲載されたいくつもの“百鬼夜行絵巻”をただ眺めているだけで刺激的で楽しい時間を過ごせます。
特に圧巻なのは、新発見された「百鬼ノ図」の最後に描かれた渦を巻いた黒雲と、黒雲の間に浮かび上がるい西洋の悪魔のような不気味なシルエットです。異教の魔物としかいいようのない悪の僕の姿がそこに描かれています。また器物をモチーフにしたユーモラスな鬼の姿に暫し見入られてしまいます。
小松和彦さんが副所長をつとめる国際日本文化研究センターでは妖怪や怪奇的な絵画をデータベース化して公開するという夢のような研究が為されているのですが、件の「百鬼ノ図」はそれとは別に「絵巻物一覧」の中にアップされていてその詳細な絵巻についてWEB上で確認することができます!便利で素晴らしい未来の一端がここにあります。
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吉光 百鬼ノ図
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怪異・妖怪画像データベース
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