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2011年04月20日

『イエメンで鮭釣りを/ポール・トーディ』

『イエメンで鮭釣りを/ポール・トーディ』

『イエメンで鮭釣りを/ポール・トーディ』(白水社)を読了。

サクラバさんのブログに紹介されていたのを読んで興味を持ち購入。イエメンに鮭を放流するプロジェクトの顛末を描いた作品。イエメンの釣好きの富豪シャイフが夢みた鮭を故郷の川に導入する計画に巻き込まれるイギリスの学者、アルフレッド・ジョーンズ博士とエージェントのハリエット、首相官邸広報のピーター・マックスウェルの物語。それぞれの間で交わされる手紙やeメール、日記や議事録などの文書から構成されている。

イギリス人の作家によるイギリスが舞台の物語だから当たり前なのだが、イエメンの富豪シャイフの回想や日記はそこに挿入されていない。博士との会話に彼の考えの一端が示されるだけだ。戒律の厳しいイスラムに釣りという娯楽の導入を夢想するのだが、その理想は結局のところ金持ちの道楽としか受け止められず、アルカイダに命を狙われてしまう。

イスラムであっても、権力と金を手にすれば戒律は緩み欲望が優先され、腐敗するのは歴史にある通りだ。博士から見たシャイフは、異教徒のもつ神秘性をもちながら、一方で親しみやすく魅力的な人物に描いているけれど、実のところエジプトやチュニジアで国を追われた元首とそうかわりない。そしてそれが釣りを文化と称して、植民地に鮭や鱒を放流してきたイギリスという国の思惑と結託し、共犯関係を結ぶのだ。

そのプロジェクトの馬鹿馬鹿しさと、同じ趣味を持つ共感により、楽しく読んだのだが、釣りをする人物がいかにも善人であるように描いているのが、気にいらない。僕もそうだけど、釣りをする人間ほど独善的な人間はいないのだから。いつだって、ひとより自分が優れた釣りをすることしか考えていないのだ。シャイフだって自分の釣りのためだったら、お金に糸目をつけず砂漠に川を作ってそこに鮭を放流しようとするくらいなのだ。どうせなら腹黒い欲望にまみれたシャイフの側からの『イエメンで鮭釣りを』を読みたい、と思う。




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Posted by もり at 23:31│Comments(0)ホン
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